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透析シャントを守る日常ケア|長く使うために気をつけたいこと

透析シャントを守る日常ケア|長く使うために気をつけたいこと

シャントは、透析患者さんにとって「命綱」といえる大切な血管です。特別なことをしなくても、日常生活の中でほんの少し意識を変えるだけで、閉塞(つまる)・出血・感染などのリスクをかなり減らすことができます。

反対に、腕枕・重い荷物・血圧測定など「ちょっとぐらい…」が積み重なると、ある日突然使えなくなることもあります。このコラムでは、40〜80代の透析患者さんとご家族が、今日からできるシャントケアのポイントを整理します。あくまで一般的な内容ですので、最終的には通院中の施設の方針と主治医の指示を優先してください。

透析シャントはなぜ「命綱」と言われるのか

シャント(内シャント/バスキュラーアクセス)は、動脈と静脈をつないで血液の流れを増やし、透析に必要な血液量を確保するための“専用の通り道”です。このルートが狭くなったり詰まったりすると、透析中の血液量が確保できず、治療時間が延びたり、場合によっては緊急で別のルート(カテーテル)を作らなければならないこともあります。

シャントは一度トラブルを起こすと、元に戻すのが難しい場合もあり、「今あるシャントをできるだけ長く使う」ことが、これからの透析生活を守る鍵になります。そのためにも、「圧迫しない」「傷つけない」「清潔に保つ」という3つの基本を、毎日の生活の中で意識することが大切です。

日常生活でざっくり押さえておきたいこと

細かい注意点はたくさんありますが、まずは次の3つを覚えておくと、シャントトラブルの多くを防ぎやすくなります。

シャントケアの3つの基本

基本のポイント 意味することのイメージ 具体的な行動の例
圧迫しない 血管をつぶすような力をかけない 腕枕をしない/重い荷物をかけない/きつい袖を避ける
傷つけない ぶつけたり、こすったり、強く引っかかない 家事や作業でぶつけやすい場面に気をつける/爪を短くする
清潔に保つ 皮膚をきれいにして、ばい菌の入り口を作らない シャワーでやさしく洗う/透析日の入浴方法を守る

最初から100点を目指す必要はありません。「あ、これはシャントに負担かも」と気づいた行動を、少しずつ減らしていくイメージで大丈夫です。

シャント側の腕で「しないほうがよいこと」

シャント側の腕には、「なるべく避けたいこと」がいくつかあります。つい無意識でやってしまいやすいものも多いので、一度まとめて確認しておくと安心です。

シャント側の腕では避けたいこと

  • 血圧測定・採血・点滴・注射をする
  • 腕時計・ブレスレット・きつい袖口(ゴム)で締めつける
  • 手提げかばん・買い物袋などを長時間ぶら下げる
  • 重い荷物やダンボールを片腕で持ち上げる
  • うつぶせ寝・腕枕などで、腕を体の下にして寝る
  • シャント部分をポンポン叩いて血管を探そうとする

血圧測定や採血などは、医療者側が誤ってシャント側を選んでしまうこともゼロではありません。「この腕にシャントがあります」と一言伝えたり、保護バンド・腕カバーなどを活用したりして、自分の身を守る意識も大切です。

衣類・寝る姿勢・荷物の持ち方のコツ

シャントを圧迫しないためには、「どんな服を着るか」「どう寝るか」「どう荷物を持つか」といった、生活の基本動作の工夫が役立ちます。

日常動作のチェックポイント

シーン 気をつけたいことの例
洋服・インナー 袖口がきつすぎないか/カフス・ゴム・腕まくりで血管を締めつけていないか
寝る姿勢 シャント側の腕を下にしていないか/長時間同じ姿勢で圧迫していないか
荷物の持ち方 手提げをシャント側にかけていないか/片側だけに重さがかかっていないか

寝るときは、シャント側の腕の下に小さめのクッションやタオルをしいて「ほんの少し高くする」と、むくみ予防にもつながります。荷物はリュックや肩掛けかばんを活用し、「シャントのある腕に集中して負荷がかからない」持ち方を意識しましょう。

運動・仕事・趣味とシャントの付き合い方

「シャントがあるから運動はダメ」「仕事や趣味をあきらめなければならない」と思い込む必要はありません。大切なのは、「シャントを直接強く使う動き」を避けながら、無理のない範囲で体を動かすことです。

ウォーキングや軽い体操、ストレッチなど、シャント側の腕に体重をかけない運動であれば、多くの場合は取り入れやすいことが多いです。一方で、シャント側の腕に体重をかける腕立て伏せ、重いダンベルを何度も持ち上げる、高い位置からの懸垂などは、血管への負担が大きくなるため注意が必要です。

仕事や趣味で腕をよく使う場合は、「どの動きがシャントに負担になりそうか」をスタッフと一緒に確認しながら、現実的な落としどころを探っていきましょう。

こんなサインが出たら早めに相談を

毎日シャントに軽く触れたり、耳を近づけて音を聞いたりしていると、「自分のシャントのいつもの状態」が少しずつわかってきます。次のような変化に気づいたときは、「様子を見すぎず、早めに相談」がポイントです。

シャントトラブルのサインの例

  • いつも聞こえていた「ザーザー」という音や振動(スリル)が弱くなった/感じにくい
  • シャントの周りが赤い・熱を持っている・ズキズキ痛む
  • 針を抜いたあと、いつもより出血が止まりにくい
  • シャント側の手がいつもより冷たい・しびれる
  • コブのようなふくらみが急に目立ってきた

これらの症状が必ず大きなトラブルを意味するとは限りませんが、「早めに診てもらう」ことで大事に至る前に対処できるケースも少なくありません。「少し気になるけれど、受診するほどでもないかも…」という段階で、一度相談してみることをおすすめします。

まとめ:完璧より「気づいたときに直していく」ケアを

シャントケアというと、「あれもダメ、これもダメ」と制限ばかりが頭に浮かぶかもしれません。ただ、すべてを100%守ろうとすると、生活そのものが窮屈になってしまいます。

大切なのは、「シャントを圧迫しない」「傷つけない」「清潔に保つ」という基本を押さえたうえで、気づいた行動を少しずつ直していくことです。当クリニックでは、シャントの状態を見ながら、日常生活やお仕事・趣味との折り合いのつけ方についても一緒に考えています。

「これくらいなら大丈夫か知りたい」「今の自分のケアで足りているか不安」という方は、透析中や外来の際に、どうぞ遠慮なく医師・看護師にご相談ください。一人ひとりの生活スタイルに合わせて、無理のないシャントケアの方法を一緒に見つけていきましょう。

よくある質問(FAQ)

  • シャント側の腕で、たまに血圧を測るくらいなら大丈夫ですか?

    基本的にシャント側での血圧測定は避けたほうが安全です。1回だけでも圧迫のきっかけになることがあるので、原則として反対側の腕を使うようにしましょう。

  • 腕時計やブレスレットは、シャントにどのくらい影響がありますか?

    きつめの腕時計やアクセサリーは、気づかないうちに血管を圧迫することがあります。シャント側には着けないか、どうしても必要な場合はゆとりを持たせるようにしてください。

  • シャント側の腕で、どのくらいの重さまでなら荷物を持ってもいいですか?

    具体的な重さの上限は人によって異なりますが、「ずっと持っているとだるい」「血管が張る感じがする」重さは避けたほうが安心です。日常の荷物はできるだけ反対側やリュックを使うようにしましょう。

  • お風呂やシャワーのとき、シャントはどう洗えばいいですか?

    強くこすらず、泡立てた石けんでやさしく洗い、よくすすいで清潔を保つのが基本です。透析当日の入浴方法やタイミングは施設ごとに異なるので、通院先の指示に従ってください。

  • 夜中にシャント側を下にして寝てしまっていました。すぐに受診が必要ですか?

    すぐに痛みやしびれが出ていなければ、多くの場合は様子を見られることもあります。ただし、そのあと音や振動が弱い・腕が腫れてきたなどの変化があれば、早めに透析施設へ連絡してください。

  • スポーツや筋トレは、シャントに悪影響がありますか?

    ウォーキングや軽い体操など、多くの運動は工夫次第で続けやすいです。一方で、シャント側の腕に強い力がかかる運動は注意が必要なので、始める前に必ず主治医や看護師に内容を相談しましょう。

  • シャントの音や振動を毎日チェックしたほうがいいですか?

    毎日でなくても、「ときどき触って音や振動を確かめる」習慣があると変化に気づきやすくなります。いつもと違うと感じたときに、すぐ相談できるようメモしておくと安心です。

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