2026.1.29 知識透析
歩ける足を守るフットケア|透析中に気をつけたいチェックポイント

透析患者さんにとって「足を守ること」は、将来の生活の質を守ることでもあります。透析や糖尿病、動脈硬化などの影響で、足先の血流が悪くなったり、傷の治りが遅くなったりする方も少なくありませんが、毎日のちょっとしたチェックとケアで、重いトラブルを防ぎやすくなります。
このコラムでは、40〜80代の透析患者さんとご家族に向けて、「今日からできる足の観察ポイント」と「自宅でできるフットケア・靴選びのコツ」を整理してお伝えします。内容は一般的なお話ですので、実際の対応は必ず主治医や透析スタッフの指示を優先してください。
なぜ透析患者さんは足トラブルが起こりやすいのか
透析患者さんでは、もともとの腎臓病に加えて、糖尿病や高血圧、脂質異常症などをお持ちの方も多く、血管や神経に負担がかかりやすい状態になっています。足先は体の中でも特に血管が細く、心臓から遠い場所のため、血流が低下すると冷えやしびれ、傷の治りにくさとなって表れやすくなります。
さらに、神経のダメージがあると「痛みを感じにくい」「靴ずれに気づきにくい」といったことが起こり、知らないうちに傷が悪化してしまう場合もあります。一見すると小さなタコやマメ、かかとのひび割れでも、放っておくと感染や潰瘍につながることもあるため、「足は毎日チェックする場所」と考えておくことが大切です。
毎日チェックしたい「足のサイン」
難しいことをしなくても、入浴や着替えのタイミングで足を「見る・触る」といった習慣をつけるだけで、早めに変化に気づけるようになります。鏡を使ったり、ご家族に手伝ってもらったりしながら、次のようなポイントを意識してみましょう。
足のセルフチェック表(例)
| 観察ポイント | チェックする場所 | 気づいたら相談したい変化の例 |
|---|---|---|
| 色 | 足の甲・指先・かかと | 片側だけ赤い/紫っぽい/白く冷たい状態が続く |
| 皮膚の状態 | かかと・足の裏・指の間 | ひび割れ・じくじくした傷・水ぶくれ・強い乾燥 |
| 形・はれ | くるぶし・足の甲・指 | むくみが強い/片側だけ腫れている/靴が急にきつい |
| 爪 | すべての足の爪 | 分厚くなった・変色している・周りが赤く腫れて痛い |
| 感覚 | 足の裏・指先 | しびれ・ジンジンする痛み・触った感じが鈍くなってきた |
| 温度 | 両足を触り比べる | 片側だけ冷たい/温かさに大きな差がある |
一度に全部チェックしようとすると大変なので、「今日は色とむくみ」「明日はかかとと爪」など、少しずつでも続けることが大切です。
自宅でできるフットケアの基本
フットケアというと特別なことのように聞こえますが、基本は「清潔にする」「乾かす」「保湿する」の3ステップです。どれも少しの工夫で取り入れやすくなります。入浴や足浴のときは、熱すぎないお湯で足全体を温め、石けんをよく泡立てて、指の間までやさしく洗います。
その後は、タオルで押さえるように水分を拭き取り、特に指の間が湿ったままにならないよう気をつけましょう。かかとなどの乾燥が気になる部分には、刺激の少ない保湿クリームを、強くこすらずに塗り広げていきます。角質を削る道具やヤスリを力いっぱい使うと、かえって傷を作ってしまうこともあるため、自己流でやりすぎないことがポイントです。
爪切りと「やりすぎ注意」のセルフケア
足の爪は、「短くしすぎない」「角を深く切り落とさない」のが基本です。深爪にすると、巻き爪や食い込みの原因になったり、傷からばい菌が入ったりすることがあります。
爪はまっすぐ横に切り、角は少しだけ丸く整えるイメージにします。視力が悪い方や、足先が見えにくい体勢の方は、無理に自分で切ろうとせず、ご家族に手伝ってもらったり、必要に応じて皮膚科・フットケア外来などで相談したりする方法もあります。また、かかとのひび割れやタコを削る専用の器具を自己判断で使うと、気づかないうちに削りすぎてしまい、出血や感染につながることもあります。
「少し心配な見た目になってきた」と感じたら、早めに医療者に見せるようにしましょう。
靴と靴下の選び方で足トラブルを減らす
どんなに足をていねいにケアしていても、靴や靴下が合っていないと、靴ずれやタコ、マメの原因になってしまいます。足の形やむくみ方は人それぞれなので、「昔から履いているから」「サイズ表示が合っているから」といった理由だけで選ばず、実際に履いたときの感覚を重視することが大切です。
靴・靴下選びのポイント
| 項目 | 気をつけたいポイントの例 |
|---|---|
| 靴のサイズ | つま先に少し余裕がある/幅がきつすぎない/かかとがカパカパしない |
| 靴の形 | 指先が細すぎない/甲やくるぶしに当たる硬い部分がない |
| 靴の素材 | あまり硬すぎない/足になじみやすい素材 |
| 靴下 | ゴム口がきつすぎない/厚すぎて靴がきつくならない |
新しい靴は、いきなり長時間履かず、まずは短時間から試してみると安心です。帰宅後に足を見て、赤くこすれているところがないかも確認してみましょう。
受診したほうがよい足のトラブル
次のような症状があるときは、「しばらく様子を見る」のではなく、早めに主治医や透析施設に相談することが大切です。特に糖尿病や足の血管の病気と言われている方は、自己判断で市販薬や貼り薬で済ませてしまわないよう注意しましょう。
- 小さな傷が数日たってもよくならない、じくじくしてきた
- かかとのひび割れが深くなり、血がにじむことがある
- 指先や足の一部が赤く腫れて熱を持っている、痛みが強い
- 片側の足だけ急に冷たくなった、色が白っぽい・紫っぽい
- 爪の周りが赤く腫れて痛い、膿が出てきた
症状の写真をスマートフォンで撮っておくと、診察の際に経過を説明しやすくなります。「この程度で相談していいのかな」と感じることでも、気になり始めた段階で一度共有していただくことが、重いトラブルの予防につながります。
まとめ:足を「毎日見る」ことが一番のフットケア
透析患者さんの足トラブルは、「気づいたときには悪化していた」というケースも少なくありません。その一方で、毎日少しずつ足を観察し、小さな変化の段階で相談していただくことで、治療の選択肢が広がることもあります。
特別な道具や難しいテクニックよりも、「足の色・むくみ・傷・爪を毎日なんとなくでも見る」「少し気になる変化は、透析スタッフに早めに知らせる」という習慣こそが、いちばんのフットケアです。
当クリニックでは、透析中に足の相談をしていただくことも可能ですので、「最近足が冷える」「かかとのひび割れが気になる」「靴が合っていない気がする」といったお悩みがあれば、どうぞ遠慮なくお声がけください。一人ひとりの足の状態や生活スタイルに合わせて、無理のないケア方法や受診のタイミングを一緒に考えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
-
透析患者は、毎日足をチェックしたほうがいいですか?
できれば毎日、少なくとも週に数回は足を「見る・触る」習慣がおすすめです。特に糖尿病や足の血管の病気がある方は、早めの気づきが大切です。
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かかとのひび割れは、病院に行くほどではないですか?
浅いひび割れなら保湿で落ち着くこともありますが、深く割れて血がにじむ場合は受診を検討しましょう。痛みが強いときや長引くときは、自己判断で削らず相談してください。
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足の爪は、自分で切っても大丈夫でしょうか?
見えにくさや手元の不安がなければ、基本的な切り方を守れば自分でケアできる方もいます。ただし、糖尿病や足のトラブルがある方は、無理をせず医療者に方法を確認しましょう。
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靴は少し大きめを選んだほうが安心ですか?
大きすぎる靴は、中で足が動いて靴ずれやタコの原因になります。つま先に少し余裕があり、幅や甲がきつくない「ちょうど良いサイズ」を選ぶことが大切です。
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小さな傷でも、透析のときに伝えたほうがいいですか?
はい、小さく見える傷でも、透析中の方では悪化しやすいことがあります。気づいたタイミングでスタッフに見せておくと、必要なケアや受診の判断がしやすくなります。
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足がよくつるのですが、フットケアと関係がありますか?
こむら返りは、電解質バランスや冷え、運動不足など、いくつかの要因が関係することがあります。頻度やタイミングをメモしておき、透析中に一度相談してみてください。
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足のことで相談したいときは、何科を受診すればよいですか?
まずは透析施設の医師・看護師に相談し、必要に応じて皮膚科や整形外科、フットケア外来などを紹介してもらうと安心です。どんな症状かを一緒に整理してから受診先を決めていきましょう。
