2026.2.10 知識透析
小さなお出かけから旅行まで|透析と上手につき合う準備とコツ

透析治療を続けていても、工夫次第で「ちょっと遠くまで出かける」「家族と旅行や帰省を楽しむ」ことは十分めざせます。ただし、スケジュール管理や体調、シャント、食事・水分など注意したい点がいくつかあるため、「勢いで決める」のではなく「準備をしたうえで楽しむ」ことが大切です。
特に40〜80代の方は、同じ距離・同じ移動時間でも、年齢や持病によって疲れ方が大きく変わります。このコラムでは、日帰りのお出かけから1〜2泊程度の旅行・帰省までを想定し、「いつ・何を・どこまで準備すると安心か」を整理してお伝えします。内容はあくまで一般的なお話なので、実際に計画するときは必ず主治医や通院中のクリニックに相談しながら進めてください。
なぜ透析中の外出や旅行は不安になりやすいのか
透析を受けている方が外出や旅行を不安に感じやすい理由には、「透析スケジュールが崩れないか心配」「急に具合が悪くなったらどうしよう」「食事や水分をうまく調整できるか不安」といった複数の要素があります。
特に血圧や体重変動が大きい方、心臓や血管の持病がある方にとっては、長時間の移動や人混み・暑さ寒さなどが負担になりやすく、無理をするとその後の透析に影響が出ることもあります。一方で、「不安だからやめておこう」を続けると、楽しみが減るだけでなく、筋力や気力が落ちてしまうこともあります。「何もかも自由に動く」のではなく、「自分にとって無理のない範囲を見つけていく」という視点が大切です。
準備の基本は『相談・計画・持ち物』の3ステップ
外出や旅行を考えるときは、いきなり宿や交通手段を決める前に、「医療側との相談」「全体の計画」「持ち物の確認」という3つのステップを意識しておくと、安心感がぐっと違ってきます。
外出・旅行前の3ステップ
| ステップ | やることの内容のイメージ | 具体的なポイントの例 |
|---|---|---|
| ①相談 | 主治医・看護師に計画の概要を伝え、注意点を確認する | 行き先・日数・移動手段・透析日の前後などをざっくり共有 |
| ②計画 | 透析スケジュールに合わせて日程や移動時間を調整する | 行きと帰りのどちらかは余裕を持った時間帯にする |
| ③持ち物 | 体調管理に必要なものをリストアップし、前日までに準備する | お薬・お薬手帳・透析情報カード・保険証・連絡先などを確認 |
最初は「日帰り」「半日程度の外出」から始めてみて、どのくらい疲れるか・どこに困りごとが出るかを確かめておくと、次の計画が立てやすくなります。
日帰りのお出かけで気をつけたいこと
日帰りの外出は、宿泊を伴う旅行に比べると負担が少なく、「練習」としても取り入れやすい選択肢です。ただし、日帰りでも移動時間が長かったり、階段や坂道が多かったりすると、想像以上に疲れてしまうこともあります。
目的地を決めるときは、「片道の移動時間」「歩く距離」「休める場所の有無」を一度イメージしてみましょう。透析前日や透析当日の外出の場合、帰宅後にゆっくり休める時間を確保しておくことも大切です。
日帰り外出のポイント(例)
- 透析の翌日で、比較的体調が安定しやすい時間帯を選ぶ
- 行きと帰りのどちらかは、混雑を避けた時間帯にずらす
- 階段や長い坂道が多い場所は、最初のうちは無理をしない
- こまめに座って休めるカフェやベンチの場所を事前にチェックしておく
- 「何時までに帰宅して、どれくらい休むか」もセットで決めておく
「せっかく来たから」と詰め込みすぎず、物足りないくらいで切り上げるほうが、結果として次のお出かけにつなげやすくなります。
宿泊を伴う旅行・帰省で押さえたいポイント
1〜2泊程度の旅行や帰省を考える場合、透析スケジュールとの相性をしっかり確認しておく必要があります。透析の前後を含めた数日間は、体調の変動が出やすくなるため、「移動が長い日」と「透析日」や「透析の翌日」が重なりすぎないよう工夫することが大切です。
遠方に宿泊する場合や、数日以上家を空ける場合は、現地での透析(いわゆる旅行透析)が必要になることもあります。旅行透析には事前の連絡や紹介状、費用の確認などが必要になるため、「なんとなくで予約する」のではなく、主治医や透析施設と相談のうえ、余裕を持って準備することがポイントです。
宿泊旅行・帰省のチェックポイント(例)
| 項目 | チェックしたい内容の例 |
|---|---|
| 日程 | 透析の前後に長時間移動が重なりすぎていないか |
| 宿泊先 | エレベーターの有無・トイレや浴室までの距離・ベッドか布団か |
| 移動手段 | 乗り換え回数・座っていられる時間・休憩の取りやすさ |
| 現地の医療機関 | 体調不良のとき相談できる外来や救急の情報をメモしておく |
| 食事・水分 | 塩分・水分の調整がしやすいメニューか、量の調整ができそうか |
「今年は日帰り、来年は1泊」といったように、段階を踏んで慣れていくイメージを持つと、心身への負担が少なくなります。
持ち物リストで「忘れ物の不安」を減らす
外出や旅行の不安の中には、「大事なものを忘れてしまったらどうしよう」という心配も含まれます。あらかじめ自分用のチェックリストを作っておくと、毎回一から考え直す必要がなくなり、気持ちにも余裕が生まれます。
外出〜1泊旅行の持ち物イメージ
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 医療関係 | お薬(予備を少し多めに)/お薬手帳/保険証・医療証/透析情報カード・連絡先 |
| 体調管理 | 体温計/マスク/小さめの飲み物(制限範囲内で)/飴やタブレットなど |
| 身の回り | 上着やストール(冷え対策)/歩きやすい靴/必要な方は杖やサポーター |
| メモ類 | 現地の医療機関や透析施設の連絡先/宿の住所・電話番号 |
慣れてくれば、「日帰り用」「1泊用」などパターンを分けておくのもおすすめです。
疲れをためないための「その場の工夫」
どれだけ準備をしても、実際に出かけてみると予想外の疲れが出ることもあります。そんなときに役立つのが、「少し早めに休む」「予定を諦める勇気」を持っておくことです。
歩き続けるのではなく、こまめにベンチやカフェで休む、エスカレーターやエレベーターがあれば迷わず使う、人混みを避けて一歩外れた道を選ぶ──こうした小さな選択の積み重ねが、翌日の体調を守ることにつながります。また、「少し息苦しい」「いつもより脈が速い」「むくみが急に強くなった」といった変化を感じたときは、その日の予定を短く切り上げる判断も大切です。
まとめ:『行ける範囲』を広げるつもりで考える
透析治療を続けながらの外出や旅行は、「あれもこれも制限される」と感じやすい一方で、自分の体と相談しながら少しずつ行動範囲を広げていく、前向きな機会にもなります。大切なのは、「みんなと同じように動くこと」ではなく、「今の自分にとってちょうどいいペースと距離を見つけること」です。日帰りから始めてみる、透析スタッフに事前に計画を見てもらう、持ち物リストを作っておく──そんな一つひとつの工夫が、不安の少ないお出かけにつながります。
当クリニックでも、旅行や帰省、現地での透析の相談などをお受けしています。「どこまでなら行って大丈夫か知りたい」「旅行の話をどこから相談すればいいか分からない」と感じている方は、透析中や外来時に、どうぞ遠慮なくスタッフにお声がけください。一人ひとりの体調や生活スタイルに合わせて、無理のない外出・旅行の形を一緒に考えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
-
透析をしていても、旅行に行ってもいいのでしょうか?
体調や持病、透析の状況によって可能な範囲は変わります。まずは主治医に行き先や日数を伝え、行けるかどうか・どの程度までなら良さそうか相談してみてください。
-
日帰りのお出かけは、透析のある日とない日どちらが良いですか?
多くの方は、透析翌日のほうが体調が安定しやすいことが多いです。ただし個人差があるため、自分が比較的ラクに動ける日を、実際の体調を見ながら一緒に探していきましょう。
-
旅行中も、体重は毎日測ったほうがいいですか?
可能であれば、いつもと同じように体重をチェックしておくと安心です。難しい場合でも、「足のむくみ」「息切れ」「指輪や靴のきつさ」などを目安に、変化がないかを意識しておきましょう。
-
現地で透析を受ける必要がある場合、いつ頃から準備すればよいですか?
受け入れ施設の状況にもよりますが、直前だと難しいことも多いため、できるだけ早めの相談が安心です。まずは通院中のクリニックに希望時期や行き先を伝え、必要な手続きやスケジュールを確認してください。
-
長時間の移動で、シャントへの影響は心配ありませんか?
同じ姿勢で腕を圧迫し続けると負担になることがあります。ときどき腕の位置を変える・荷物をシャント側にかけない・圧迫感の強い服を避けるなど、基本的なシャントケアを意識して過ごしてください。
-
旅行先で体調が悪くなったとき、まずどこに連絡すれば良いですか?
事前にメモしておいた地元の医療機関や、通院中の透析クリニックの連絡先が頼りになります。症状や状況によって対応が変わるため、「いつから・どんな症状があるか」を整理して伝えるようにしましょう。
-
家族にどこまで頼って良いか分からず、いつも遠慮してしまいます。
「全部任せる」か「全部自分でやる」かではなく、「ここだけ手伝ってほしい」というポイントを決めて伝えると、お互いに動きやすくなります。準備や移動の分担についても、一緒に計画するところから始めてみてください。
