2026.3.14 在宅ケア知識透析
筋力と体力を守る在宅ケア|透析中でも続けやすい運動の考え方

透析治療が続くと、「前より疲れやすい」「階段がしんどくなってきた」と感じる方が少なくありません。筋力や体力の低下は、転倒や骨折、生活の自立度にも関わるため、無理のない範囲での“ちょこっと運動”は、透析中の大切なケアの一つです。
ただし、心臓や血圧・シャントの状態によって、向いている運動は人それぞれ違います。この記事では、自宅でできる運動の考え方と、日常生活の中に上手に取り入れるコツを整理してお伝えします。新しい運動を始めるときは、必ず主治医や看護師に内容を伝え、自分に合ったペースを一緒に確認してから行ってください。
透析と筋力低下にはどんな関係がある?
透析治療中は、腎臓の病気そのものの影響に加えて、食欲低下やたんぱく質不足、運動量の減少などが重なり、筋肉が減りやすい状態になりがちです。特に下半身の筋力が落ちると、少しの段差でつまずきやすくなったり、椅子から立ち上がるのが大変になったりと、日常生活の動きそのものに影響が出てきます。
また、筋肉量が減ることで基礎代謝も落ち、体温が下がりやすくなる・疲れが取れにくいといった変化につながることもあります。透析を受けているからこそ、「運動は危険だからやめておく」と考えるのではなく、「どんな運動なら安全に続けやすいか」を一緒に考えていくことが大切です。
無理なく始めやすい運動の種類
激しいスポーツや長時間のジョギングをしなくても、「座ってできる体操」「短時間の散歩」など、日常の延長として取り入れやすい運動はたくさんあります。
透析中の方が始めやすい運動の例
| 種類 | 内容のイメージ | ポイントの例 |
|---|---|---|
| ウォーキング | 自宅の周りや屋内での歩行 | 息が弾むか弾まないか程度のペースで、時間を決めて歩く |
| いす体操 | 自宅の周りや屋内での歩行 | ふらつきにくく、安全に下半身を動かしやすい |
| ストレッチ | 肩・首・背中・太ももなどの柔軟 | 呼吸を止めず、気持ちよい範囲で伸ばす |
| かかと上げ運動 | いすにつかまって、かかとを上下させる | ふくらはぎの筋肉を使い、血行の改善にもつながる |
| 家事を利用した動き | 掃除機がけ・洗濯物をたたむ・軽い片づけなど | 「ながら運動」として、無理のない範囲で少しずつ取り入れる |
「どれを全部やるか」ではなく、「自分が続けやすそうなものを1〜2個選ぶ」くらいの気持ちで十分です。
1日の中に運動を組み込むコツ
運動は「時間をとってしっかりやらなければ意味がない」と感じてしまうと、なかなか続きません。大切なのは、短い時間でも毎日の生活の中に“組み込んでしまう”ことです。
例えば、「朝起きたらいす体操を5分」「テレビを見ながら足首を回す」「夕食前に家の中を5分だけ歩く」といったように、すでにある習慣とセットにすると続けやすくなります。また、「何分やるか」よりも、「息が上がりすぎない範囲かどうか」「翌日に強い疲れを残していないか」を目安に、少しずつ様子を見ながら調整していくことが大切です。
安全に運動するためのチェックポイント
運動はからだに良い面が多い一方で、無理をすると心臓や血圧、シャントに負担がかかることもあります。次のようなポイントを意識しながら、「自分にとって安全な範囲」を一緒に探していきましょう。
運動前後に確認したいポイント
- 熱・強いだるさ・息切れがないか
- 血圧がいつもより極端に高い/低い値になっていないか
- シャント箇所に腫れ・痛み・違和感がないか
- 運動中、胸の痛み・強い息切れ・めまい等のが出ていないか
少しでも「いつもと違う」と感じたら、その日は無理をせず運動を中止し、必要に応じて主治医や透析施設に相談してください。「この程度なら続けてもいいのか分からない」と迷うときは、次の透析のときに具体的な状況を伝え、一緒に判断してもらうと安心です。
まとめ:「たくさん」より「少しずつ・続ける」がいちばんの近道
透析治療を続けながらの運動は、「やる・やらない」の二択ではなく、「自分に合った量と内容を少しずつ積み重ねていく」取り組みです。いきなり運動量を増やす必要はなく、1日数分の体操や短い散歩でも、続けていけば筋力や体力の維持に役立ちます。
当クリニックでは、検査結果や持病、普段の生活の様子も踏まえながら、「どんな運動から始めるのが無理がないか」を一緒に考えています。「最近足腰が弱ってきた気がする」「運動したほうがいいのは分かるけれど不安」という方は、透析中や外来の際に、どうぞ遠慮なくスタッフにご相談ください。一人ひとりの体調に合わせて、続けやすい運動の取り入れ方を一緒に見つけていきましょう。
よくある質問(FAQ)
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透析をしていても運動をして大丈夫ですか?
体調や持病によって内容は変わりますが、無理のない運動は筋力維持に役立つことが多いです。始める前に、主治医に種類や頻度を相談してください。
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どのくらいの時間運動すれば良いですか?
最初は1回5〜10分程度でも構いません。息が切れすぎない範囲で、少しずつ時間や回数を増やしていくイメージが安全です。
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透析当日に運動しても良いのでしょうか?
透析後は疲れが強く出ることもあるため、無理な運動は控えたほうが安心です。体調を見ながら、軽いストレッチ程度から様子を見ましょう。
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シャント側の腕は、どこまで動かしても大丈夫ですか?
日常動作の範囲で動かすことは問題ない場合が多いですが、重い物を持つ運動や強い負荷は避けたほうがよいことがあります。心配なときは、具体的な動きをスタッフに確認してください。
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運動中に息切れや動悸を感じた場合はどうすればいいですか?
すぐに運動を中止し、休んでも症状が続く場合は早めに医療機関へ相談してください。軽くても繰り返す場合は、次の受診時に必ず伝えましょう。
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自宅でできる運動と、リハビリの違いは何ですか?
自宅での運動はご自身のペースで行うもの、リハビリは専門職の指導のもとで行う“オーダーメイドの運動”というイメージです。必要に応じて、リハビリの利用も選択肢になります。
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運動すると食欲が出て体重が増えないか心配です。
体重の増え方や栄養状態は、検査値と合わせて判断することが大切です。運動と食事のバランスについても、主治医や管理栄養士に一緒に相談してみてください。
