2026.3.14 投薬知識透析
お薬との付き合い方を整理しよう|透析中でも「飲み忘れ」「飲みすぎ」を防ぐコツ

透析治療を続けていると、高血圧・心臓病・糖尿病・リンのコントロールなど、どうしても飲む薬の種類が増えがちです。そのぶん「飲み忘れたかも」「今、飲んでいい薬なのか分からない」と迷う場面も増えますが、お薬の役割とタイミングを一度整理しておくだけでも、毎日の不安はぐっと減らせます。
この記事では、40〜80代で透析を受けている方とご家族に向けて、「よくあるお薬のつまずき」と「今日からできる工夫」をまとめました。ここでお伝えする内容は一般的なお話なので、実際の飲み方や量の変更は、必ず主治医・薬剤師の指示を最優先してください。
なぜ透析中は「お薬」との付き合いが難しくなるのか
透析を受けている方の多くは、腎臓病だけでなく、高血圧・心臓病・糖尿病・脂質異常症・骨や貧血の治療薬など、複数の病気に対する薬を同時に使っています。さらに、腎臓の働きが弱くなっていることで、薬が体から抜けにくくなり、「同じ薬でも腎臓が健康な人とは飲み方が違う」ケースも少なくありません。
透析の前に飲む薬・後に飲む薬・透析日だけ飲み方を変える薬などが混ざると、どうしても複雑になり、「いつ何を飲めばいいのか」を頭の中だけで管理するのは難しくなります。その結果、飲み忘れや重ね飲み、自己判断での中止・減量が起こりやすくなり、血圧やリン値が安定しにくくなることもあります。「覚えられない自分が悪い」のではなく、「仕組みとして複雑になりやすい」ことを前提に、ラクに管理できる工夫を考えていくことが大切です。
よくある「お薬のつまずき」と、その背景
まずは、透析中の方からよく聞かれる“つまずきパターン”を整理してみます。
よくあるお薬のつまずきと背景
| つまずきのパターン | よくある場面の例 | 背景として起きていることの例 |
|---|---|---|
| 飲んだかどうか分からなくなる | 朝食後にバタバタしていて、記憶があいまいになる | 薬の数が多く、飲んだ「手応え」が少ない |
| 透析の日だけ飲み方を変える薬を忘れる | いつもと違う時間に起きた・クリニックが混んでいた | 特別ルールの薬が頭に入りきらない |
| 体調が良いからと勝手に減らす・やめてしまう | 血圧が落ち着いてきた/むくみが減ってきたように感じる | 「良くなった=薬がいらない」と思ってしまう |
| 市販薬やサプリを足してしまう | 風邪気味・疲労感があるときにドラッグストアで購入 | 飲み合わせや腎臓への影響をイメージしにくい |
| 違う病院でもらった薬との重なりが分からない | 歯科・整形外科・皮膚科など複数の病院に通っている | 「同じ成分の薬」が別の名前で処方されることがある |
自分に当てはまりそうなところがあれば、「気をつけるべきポイントが見つかった」と前向きに捉えて、対策を一緒に考えていきましょう。
飲み忘れ・飲み間違いを減らす工夫
お薬の管理は、「記憶」だけに頼らず、「目で見て分かる仕組み」に置き換えていくことがポイントです。
今日からできるお薬管理のコツ
- お薬カレンダーや1週間分のピルケースを使い、「いつの分を飲んだか」を目で確認できるようにする
- 「朝食後」「寝る前」など、生活の決まった動きとセットにしておく
- 透析日ルールのある薬は、色付きのシールや付箋で目立たせる
- 複数の病院にかかっていても、なるべく同じ薬局で調剤してもらい、飲み合わせをチェックしてもらう
- 飲み忘れが多いと感じたら、「今の回数・タイミングが自分には難しい」と正直に主治医に相談する
“ちゃんと飲めていない=ダメな患者さん”ではなく、「今のスケジュールが現実に合っていないサイン」と考えて、医療者と一緒に調整していくことが大切です。
透析と関係の深いお薬で気をつけたいポイント
薬の種類ごとに、透析中ならではの注意点があります。細かな指示は人それぞれ異なるため、ここでは「こういう視点がある」というイメージだけ押さえておきましょう。
お薬の種類と意識しておきたいこと(例)
| 薬の種類 | 例に挙げられる薬の役割 | 意識しておきたいポイントのイメージ |
|---|---|---|
| 血圧を下げる薬 | 高血圧・心臓病の治療 | 透析前後で血圧が下がりすぎないよう、飲むタイミングが調整されることがある |
| リンを下げる薬 | リンの値をコントロールする | 食事と一緒に飲むタイプが多く、「食べたら飲む」が基本になる |
| 利尿剤 | 尿量を保つ・むくみを減らす | 残っている腎機能に応じて量が変わることがある |
| 糖尿病の薬 | 血糖をコントロールする | 腎臓の状態によって使える薬・使い方が限られることがある |
| 抗凝固薬・抗血小板薬 | 血を固まりにくくする | 出血のリスクと、血栓を防ぐメリットのバランスを主治医と相談しながら決める |
| 睡眠薬・精神科の薬など | 不眠・不安・気分の落ち込みなどへの薬 | 眠気・ふらつきが転倒につながらないか、様子を見ながら調整が必要 |
「この薬は何のために飲んでいるのか」「自分の場合、透析との関係で気をつける点はあるか」を一度確認しておくだけでも、自己判断で増減しようという気持ちが和らぐことがあります。
お薬手帳・お薬リストを『見せる』ことも治療の一部
お薬手帳や薬の一覧は、「自分のためのメモ」であると同時に、「医師・薬剤師・透析スタッフに情報を渡すための大事なツール」でもあります。診察や透析のときにお薬手帳を見せてもらえると、「同じ成分の薬が重なっていないか」「腎臓に負担がかかりそうな薬が紛れていないか」を確認しやすくなります。
救急外来など、初めての医療機関を受診する場面でも、お薬手帳があるかないかで、対応のスピードや安全性が大きく変わります。紙の手帳でもスマホのアプリでも構いませんので、「常に持ち歩く」「透析のときは必ず一緒に出す」を習慣にしておくと安心です。
まとめ:『自己判断で増減しない』がいちばんの安心材料
お薬は、正しく使えば体を守る大切な味方ですが、自己判断で増やしたり減らしたりすると、かえって体調を崩すきっかけになることもあります。透析中の方はとくに、腎臓の状態や透析スケジュールと薬の関係が複雑になりやすいため、「分からない」「管理しきれない」と感じるのは自然なことです。
当クリニックでは、「飲み忘れが多い」「薬の数が多くて不安」「市販薬やサプリをどうすればよいか分からない」といったご相談もお受けしています。心配や疑問が出てきたときは、一人で抱え込まず、透析中や外来の際にどうぞ遠慮なく医師・看護師・薬剤師にお声がけください。一人ひとりの生活スタイルに合わせて、お薬との無理のない付き合い方を一緒に考えていきましょう。
よくある質問(FAQ)
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いろいろな病院から薬をもらっています。まとめたほうがいいですか?
はい、すべての薬の名前と飲み方を1つのリストやお薬手帳にまとめておくと安全です。同じ薬が重なっていないか、主治医や薬剤師が確認しやすくなります。
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飲み忘れに気づいたとき、すぐ飲んでも大丈夫ですか?
薬の種類や時間によって対応が違うため、一律に「すぐ飲んでよい」とは言えません。まずは添付文書や説明書を確認し、迷う場合は主治医や薬局に相談してください。
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透析の日は、薬を飲むタイミングを変えたほうがいいですか?
中には「透析前に飲むもの」「透析後に飲むもの」が決められている薬もあります。自分の場合のルールを一度整理してもらい、紙やメモにしておくと安心です。
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サプリメントや健康食品を足してもかまいませんか?
成分によっては腎臓に負担をかけたり、薬と作用が重なったりすることがあります。新しくサプリを始める前に、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
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体調が良いので、血圧の薬を自分で減らしても大丈夫ですか?
一時的に調子が良くても、自己判断で減らすと血圧が乱れる原因になります。量を変えたいときは、必ず主治医に相談し、検査値や状態を見ながら一緒に決めていきましょう。
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薬代が負担で、できれば数を減らしたいです。相談してもいいですか?
費用のことも大切な問題ですので、遠慮せず主治医や薬剤師に伝えてください。必要性の見直しや、ジェネリック医薬品への変更など、相談できる場合があります。
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物忘れが増えてきて、お薬管理に自信がありません。どうすれば良いですか?
一人で抱え込まず、家族や訪問看護、ケアマネジャーなどと一緒に仕組みを考えることが大切です。ピルケースやお薬カレンダーの利用も含めて、透析スタッフに相談してみてください。
