2026.9.21 食生活
透析患者の食欲低下|食べられない日が続くときの相談目安

透析中に食欲が落ちると、「制限があるから食べないほうがよい」「体重が減れば水分管理が楽になる」と考えてしまうことがあります。しかし食べられない状態が続くと、筋肉や体力が落ち、ドライウェイトや検査値の見方も変わります。この記事では、食欲低下の原因を分け、記録したい変化と相談を急ぐ目安を整理します。
食欲低下は、食事・体調・透析条件を分けて確認します
食欲が落ちる理由には、暑さや疲れ、便秘、口の中の不調、薬の影響、感染、気持ちの落ち込み、透析不足などがあります。透析直後だけ食べにくいのか、透析のない日も続くのか、においや味の感じ方が変わったのかを分けると、相談の手がかりになります。
「食べていないから体重が減った」とは限りません
透析前後の体重には体内の水分が関わります。一方、数週間から数か月で筋肉や脂肪が減っている場合は、今までのドライウェイトが合わなくなることがあります。食事量が落ちて体重が減ったときは、むくみや血圧だけでなく栄養状態を確認します。
検査値が良く見えても、食べられているとは限りません
食事量が少ないと、カリウムやリンが低めに出ることがあります。数値が下がったことだけを喜ばず、体重、筋力、アルブミン、食事内容、透析量などを合わせて見ます。制限が守れた結果なのか、栄養が足りないのかを医療者と確認しましょう。
| 原因を探る視点 | 確認する変化 | 相談先 |
|---|---|---|
| 食べにくさ | 口内炎、歯、飲み込み、味やにおいの変化 | 主治医、歯科など必要な診療科 |
| お腹の症状 | 便秘、吐き気、腹痛、早く満腹になる | 主治医、看護師 |
| 全身状態 | 発熱、だるさ、息苦しさ、むくみ | 透析施設または医療機関 |
| 生活 | 睡眠、気持ち、買い物や調理の負担 | 主治医、看護師、家族 |
食事記録は、量だけでなく食べられた時間と理由を残します
一日分を細かく計算する必要はありません。普段の半分しか食べられなかった、朝は食べられたが夕食は無理だった、においで気持ち悪くなったなど、いつ・どの程度・何が邪魔したかを短く記録します。
透析日と非透析日を分けると傾向が見えます
| 時間 | 記録すること | 相談につながる例 |
|---|---|---|
| 朝 | 食欲、吐き気、便通 | 朝だけ食べられない日が続く |
| 透析前 | 食事量、血圧、だるさ | 治療前から食事がとれない |
| 透析後 | 食べられた量、吐き気 | 帰宅後も何もとれない |
| 非透析日 | 一日の食事と活動 | 治療のない日も食欲が戻らない |
体重は、透析前後の値だけでなく、ドライウェイトの変更、衣服、食事量の変化も一緒に記録します。ベルトが緩くなった、立ち上がりに力が入りにくい、歩く速度が落ちたという生活上の変化も栄養状態の手がかりです。
食欲が落ちたときは、制限を増やすより食べられる形を探します
透析中の食事は、塩分、カリウム、リン、水分を考えますが、食事量が落ちているときに制限だけを増やすと、必要なエネルギーやたんぱく質まで不足することがあります。日本透析医学会の食事療法基準やKDOQIの栄養ガイドラインでも、栄養状態を評価し、患者さんごとに食事を調整する考え方を示しています。
| ありがちな考え方 | 相談して整えたい考え方 |
|---|---|
| 検査値が高いので食事を抜く | 何をどの程度減らすかを検査値と食事量から決める |
| 食べられない日は水分だけで済ませる | 水分量を守りながら、少量でとれるエネルギー源を相談する |
| 栄養補助食品を自由に選ぶ | カリウム、リン、糖分、水分を確認して選ぶ |
| 体重が減れば透析が楽になる | 水分と筋肉・脂肪の減少を分けて評価する |
少量で食べられる回数と形を相談します
一度に一人前を食べられない場合は、少量を分ける、食べやすい温度や食感を選ぶ、調理負担を減らす方法があります。ただし具体的な食品は、糖尿病、カリウム、リン、塩分、飲み込みの状態で変わります。一般的な献立をそのまま真似せず、自分の検査値に合わせましょう。
栄養補助食品は透析向けかどうかを確認します
市販の飲料やゼリーは、栄養を補える一方で、水分、カリウム、リン、糖分が多い場合があります。始める前に商品名と成分表示を主治医や管理栄養士へ見せ、使う量とタイミングを確認してください。
参考:日本透析医学会「慢性透析患者の食事療法基準」、KDOQI Clinical Practice Guideline for Nutrition in CKD
KDOQIは海外のガイドラインであり、日本の食事や当院の個別指示を置き換えるものではありません。栄養状態を定期的に評価し、検査値や治療法に合わせて調整する考え方の参考として用いています。
食べられない状態が続くときは、次の透析日を待たず相談します
当日中に連絡したい変化
食事も薬もとれない、嘔吐が続く、発熱、強いだるさ、急な体重変化がある場合は透析施設や医療機関へ連絡します。
受診を急ぐ症状
息苦しさ、胸の痛み、意識がぼんやりする、吐血や黒い便、強い腹痛がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
早めに共有したい生活変化
一週間ほど食事量が戻らない、服が緩くなった、歩く力が落ちた、気持ちの落ち込みが続く場合は、強い症状がなくても相談します。
食欲低下の原因が透析条件だけとは限りません。感染、消化器の病気、薬、口腔の問題、気持ちの負担などを確認し、必要に応じて別の診療科や栄養支援へつなぎます。処方薬を飲めない場合は、後からまとめて飲まず、次の対応を確認してください。
「食べられない」を小さな相談と思わないでください
当院では、透析前後の体重、血圧、検査値だけでなく、食事量や生活の変化も確認します。主治医や看護師へ、普段の何割くらい食べられたか、いつから続くかをお伝えください。電話は03-5615-1566、予約案内はご予約・お問い合わせをご確認ください。
よくある質問
一食抜いただけでも連絡が必要ですか?
必ずしも緊急ではありませんが、薬も飲めない、嘔吐や発熱がある、食べられない状態が続く場合は連絡してください。
食欲がない日は果物だけでもよいですか?
果物はカリウムや水分を含みます。量や種類は検査値によって変わるため、自己判断で偏らず相談しましょう。
栄養ドリンクを使ってもよいですか?
糖分、カリウム、リン、水分、薬との重複を確認する必要があります。商品情報を医師や管理栄養士へ見せてください。
体重が減ったらドライウェイトも下げますか?
水分が減ったのか、筋肉や脂肪が減ったのかを確認して医師が判断します。自己判断では変更しません。
食欲低下で受診を急ぐ症状はありますか?
息苦しさ、胸の痛み、意識の変化、吐血、黒い便、強い腹痛がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
※本記事は、当院で食事についてよくいただくご相談を整理したものです。食事制限の内容は患者様ごとに異なるため、具体的な食事内容は主治医や管理栄養士にご相談ください。
